出来れば障害を起こしてからの治療でなく起こさないための指導、障害の早期発見治療が最も重要です。
しばしば犯し易いのが熟練過程で、十分な予防策なしで過度のレベルを行うことであり注意が必要です。
そのためにもヘルスチェックを決まった項目で(シートなどを考案し)定期的に行うことが望まれます。(アメリカの大リーガーで行われているピッチャーの投球制限など)
- (1)適切な水分補給
- 戦前の誤った軍事教練が尾を引いているものに水分摂取の制限があります。正しい水分補給はプレイの前より行う必要があります。プレー中の補給はのどが渇く前に早めに行って下さい。(規則的にとること)小・中・高の学生の猛暑の中での競技中飲水タイム(ウォーターブレイク)は事故防止に非常に有効です。(出来れば5〜15°Cの糖濃度5%以下のスポーツドリンクなど。)
- (2)ストレッチング
- 筋肉を伸ばすという意識でなく、反対側の筋肉をゆっくり縮める、緩めるという意識をもってすることです。サッカーが盛んになり groin pain (股関節痛の一つ)が増加しており股関節のストレッチの重要性や、野球のピッチャーにおける上肢の負担をかけずパフォーマンスの向上のための股関節の柔軟度の重要性、そのための大腿四頭筋やハムストリングのタイトネスの改善により正しいフォームでの投球が可能となります。プロの一流投手の股関節の高い柔軟度は必須。又、バッティングを時々反対に振ってみたり、ランニングのコースを逆に走り偏足の下肢の負担を避けること(歩道などは道路側に傾斜している)など科学的根拠に伴う練習を行うことが重要です。
- (3)筋力トレーニング
- 競技の補強すべき筋肉に対して、正しいやり方で行います。肩腱板(インナーマッスル)に対する際も脇を必ず閉じて行うなど原則を守って行わないと全く意味がなくなります。ペンチプレスは人気のあるジムの訓練機ですが、肩の亜脱臼障害などを引き起こしやすいので監視者のもと能力以上に無理をしない事です。最近ほとんど見かけなくなりましたが膝伸展位や、両下肢の進展挙上で行う誤った腹筋やペナルティ(罰)としてのウサギ跳びなどは決して行ってはいけません。
- (4)靴の管理
- 靴を履く競技では日々使用する練習場や競技の特性で特徴的な変形をきたします。
時々靴底を観察し、変形をきたしていたら補修をしましょう。又偏平足などがある時はアーチサポートなどを作成し下肢の障害の予防を図って下さい。(腸脛靭帯炎、有痛性外脛骨他)
- (5)テーピング
- 本来は障害の予防としてのものですが、障害後の固定法として誤って理解している競技者がいます。競技に合わせた正確なテーピングを行って下さい。競技の前に施行し競技後は速やかに除去するものです。また固定力は思った程強固でないことを理解し過信しないよう注意を払って下さい。(いずれにせよ熟練したトレーナーが行うことが望ましい)
- (6)PNF、AKA
- 以前より注目されている運動器のコンディショニング法です。
PNFとぱ固有受容性神経筋促通法”と言われ感覚受容器を刺激することによって神経や筋の働きを高め、身体機能を高めるテクニックです。
スポーツウォーミングアップ、スポーツ障害の治療と予防、スポーツコンディショニング、関節の可動範囲を大きくする、身体運動時の筋・腱・靭帯などの障害を予防、主働筋と桔抗筋による筋活動をスムーズに促す、神経と筋の働きをなめらかにして、神経伝達速度をはやめる、リラクゼーション効果などがあります。
AKAは“関節運動学的アプローチで関節運動学に基づき、関節の遊び、関節面の滑り、回転、回旋などの関節包内運動の異常を治療する方法です。
これらは熟練した術者によって行われて効果がみられるものなので確認しておく必要があります。
一般の競技者で大切なことは、年齢に合わせたトレーニングを行うことです。小学生によく見られる勝負にこだわりすぎた特定の選手起用によるオーバーユースを避ける。中学・高校では挫折をさせない練習が必要です。(過度の練習による致命的な障害の惹起、回復に配慮した練習計画をたてて下さい。持久力は中学生くらいから、筋肉トレーニングは高校生くらいから始めるのが望ましいです。)若年者の筋トレ過剰による障害(特に腰椎分離症)を防ぐために、関係者(監督、コーチ、トレーナー、保護者など)への啓蒙が必要です。
また、成長期は個人差が大きく、発達に合わせた指導を行うことが必要です。個々の努力を認め、励ましと達成した目標に対して賞賛することで更なる向上がみられるようになります。練習計画では回復のない練習を避けること。やり過ぎるよりやり足りないくらいの方が良いと言えます。オーバートレーニングでは結果が出ません。十分に回復してこそ、十分なパフォーマンスが可能なのです。一週間の練習、週単位の練習にメリハリをつけることが重要です。
最近、注意すべきは“ドーピング”です。現在、全国大会レベルではすべての競技で既に開始されているので、知らないでは済まされません。インターネットなどで最新の情報(禁止薬物)を入手していくことが必要です。
生命にかかわるものの一つとして“心臓震盪”があります。野球のボール、格闘技の蹴りなどによる胸部への強い衝撃で心房細動を起こすことで時に見られます。小学生から高校生までの肋骨や胸骨がやわらかい時期に起こり、今までは現場での十分な治療ができませんでしたが、携帯の自動体外除細動器(AED)が出現し救命が可能となりました。可能性のある競技では出来るだけ持参することをお勧めします。
最後に、今後の課題として少子化と学校指導者の不足があります。現在進んでいる外部指導者の導入は有効な試みの一つですが、正確なスポーツ医学の知識が欠如し、旧来の経験に頼る独りよがりな指導者が時に見られるのが残念です。
近年、徐々に中高年に普及しているニュースポーツ(インディアカ、グランドゴルフ、ゲートボールなど)はスポーツ障害が起きにくい点で薦めやすいです。